2020年1月18日と19日に「最後のセンター試験」が行われました。
正確には,2020年度大学入学者選抜大学入試センター試験となりますが,1990年に第1回が始まってから実に30年が経過しており,その後は大学入学共通テストへとその姿を変えて現在に至ります。
今回はその中から「英語(筆記)」を選び,難易度や解き方,そして私の塾に寄せられたデータをまとめてみることにしました。

2020年度のセンター試験英語
センター試験に馴染みのない方のために言っておくと,英語(筆記)の時間は120分,マーク数は54問で200点満点です。
これから大問ごとに目立った問題を解説していきますが,手元に問題を用意していただくとスムーズで,問題や解答をお持ちでない方は以下でダウンロードできます↓
第1問の総評
第1問は普段通りの形式で,発音とアクセント問題が計7問あります。
発音問題はとても簡単で,[2](以下,空欄の番号を角カッコで表記することにします)では,いつも私が授業中に,ネタでよく生徒をからかっていたlooseの読み方が出たので良かったです。
みなさん,loose leafを「ルーズリーフ」と読んでいますが,正解は「ルース(/lu:s/)」です。
なお,[6]のcanal(運河) のアクセントは難しかったと思います。
正解は第2音節ですが,それがわからなくても,②~④の選択肢が第1音節にアクセントがあるため,消去法で①を選ぶことも可能でしょう。
第1問の目標点
10/14点(14点満点で10点以上)
第2問の総評
第2問も普段通りの問題形式でしたが,やや難易度が高い問題が見受けられました。
例えば,[8]は①と③で悩むでしょうし,[9]は人によっては特に難易度が高いように感じられるでしょう。
正解はboth endsですが,either endでもほぼ同じ意味になります。
bothは両側を一気に見るので複数扱いで,eitherは片側ずつ見ていく感じなので単数です。
[12]は決まり文句なので多くの受験生が正解できたと思いますが,[13]は知らなかった方も少なくないでしょう。
「He is hard to please.(彼は気難しい。)」という例文が,To please him is hard.と変換できることを知っていると理解しやすいでしょう。
[14]は「That nobody was at home happened.」という文を「仮主語のit」を用いて表したものですが,thereが目に入ってしまうと惑わされてしまいます。
その意味で難しいと評価しました。
[15]と[16]は,2択まで絞れて50%の勘で解いた受験生も多かったでしょう。
前者のAでは「~する限り」となる日本語が入りますが,ifを入れても意味が通じるときはas long as(そうでない場合はas far as)と覚えていれば正解できます。
その他にも,「考え直す」や「AとBは別物」といった表現のように,知らないとできない問題が多めでした。
[17]は文脈問題です。
自信は持てなくても,「~を除いて」の意味になるexcept forの方が正しそうだと考えられれば正解できますが,確実ではないという意味で,難し目の問題に入るでしょう。
B問題も普段通りで,Withoutを用いた仮定法過去完了など,直前の授業で教えたことが結構出ていたので,やはり最後まで頑張ることは大事だと思いました。
[20]と[21]は難しかったです。
「the youngest is studying music」と繋げて,in Londonまでは作れても,ofとwhomの処理をどうするかで悩んだ受験生が多かったのではないでしょうか。
whomはthemを関係代名詞にしたもので,元々はthe youngest of them(three daughters)だった。
と考えられた方は,結構な実力の持ち主でしょう。
[22]と[23]は,普段から多くの英文を読んできた生徒であれば難しくなかった問題だと思います。
どちらかと言えば,文を読む際に出てくる英文法に精通している必要があるでしょう。
普通の文法問題(ネクステとかForest)ではあまり見ないタイプの問題かと思います。
C問題ですが,数年前に初めてセンター試験でお披露目となった際には身構えましたが,今ならほとんどの受験生が対策済みで,焦らず解くことができたはずです。
とはいえ,ハマってしまうと時間だけをロスしてしまいますから,わからないときは潔くとりあえず答えを決めておき,先に進んで時間が余ったときに戻ってくるのが良いでしょう。
[24]では,初めて遊園地の話題を聞いたはずのLukeが二言目には冷静に解説しだして,内容的に少し不自然な問題のように感じました。
[26]はMs.Sakamotoという発話者にも目を向けることで,先生と生徒の話だとわかるとスムーズです。
これは良問と言えるでしょう。
第2問の目標点
34/47点
第3問の総評
やっぱり来ました,文脈問題で,余計な文を取り除く問題が。
これは,どんなにできる生徒でも間違えてしまうことがあるので,出来に関してはその都度不安が付きまといます。
肝心なのは,自分の論理に自信を持つことでしょう。
今回は3問ともみんな難しかったですね。
類問演習を積んでいれば,「間違いの選択肢に特有の,匂いめいたもの(雰囲気)」を嗅ぎ取ることはできるでしょうし,私は[29]を解いていて,
Anotherでそれっぽく書いてるけど,どうせコショウは話と関係ないものだろう。
的な雰囲気を感じ取りましたが,第3問の答えが全部②というのは受験生泣かせでした。
[27]は文科系女子にはおそらく辛い,NBAの話題でしたが(もちろん,知らなくても正解できますが,知っていると有利です),レイカーズとピストンズという名前に反応した高校生も少なくなかったでしょう。

続けて,Bの要約問題です。
慈善活動のための資金をバイトで集めるということで,[31]だけ③と④でつまずきそうな問題でした。
しかし,④はin townとなっているのが誤りで,in our townとは書かれていないわけです。
和訳を見たら,全然自分が考えていた内容とは違うことに驚くでしょう。
こういう特徴が,合否を分ける問題には備わっているということを学んでいただけたらと思います。
第3問の目標点
28/33点
第4問の総評
Aは面白い内容でした。
実験内容も丁寧で,わかりやすかったように思います。
詳細までは理解できなくても,[34]と[35]共に,正解の④と他の何かとの2択になるでしょうから,どちらとも勘で解いたとしても計3問は正解できるでしょう。
数学に苦手意識のある方は,得点の計算に不安を感じたかもしれません。
Bの問題文にboth daysと出ているので,これを見て第2問の文法問題に慌てて戻った人もいるかと思います。
[38]は④がひっかけ,[40]は③か④で迷った人がいることでしょう。
他は時間さえかけられればできる問題です。
第4問の目標点
30/40点
第5問の総評
第5問は物語文となります。
昔のように,イラストから選ぶ出題ではありませんでしたが,イメージを頭に浮かべながらやると解きやすい問題です。
[44]に,昔の第2問のような推測問題が出ていたところが懐かしかったです。
ストーリー内容はちょっとベタな感動物でしたが,ドラマ的な展開があって楽しく読めました。
間違えの選択肢が明らかにそれとわかるものだったので,問題の難易度は低いように思います。
とはいえ,偏差値の高い子が[44]で間違えているのを見ましたし,無傷で通過するのは容易ではないようです。
第5問の目標点
24/30点
第6問の総評
「Vending machine=自動販売機」がわからない人はいましたか。
一応,第1段落がその説明になっていましたが,この語句を知らないと先行きが心配です。
なお,形式は従来のものと同様で,第2段落では昔の自販機の様子が出てきますが,私はあまりよくイメージすることができませんでした。
第3段落は,年号と色々な自販機の説明があるため,さらに頭が混乱してきます。
ですが,こういった問題はとりあえず,「沢山種類があるな」くらいに留めておいて,後で突っ込まれた質問をされたら,その時に初めて詳細をチェックしにいくくらいの適当さが重要です。
案の定,[47]がそのタイプの問題でした。
色々書いてあった箇所が答えを導くためのヒントになっておらず,最初のところに書かれていたものをまとめた③が正解だったので,肩透かしをくらいました。
[48]のcounterfeit(偽造する)は単語帳には載っていないので,完全に推測で解きます。
②の文意が正確に読み取れないと正解できないでしょう。
[49]は③が巧みに考えられた誤答で,正解の④の前に出てきているのもニクイですが,「自販機で売っている商品の安全性」については文中で言及されていません。
そして,[50]が一番の難問で悩みます。
日本について言及はありますが,自販機の日本社会における文化的な説明をしていたのは5段落目の最後にちょろっとですから,最後の結びも考慮すると,②の内容がより近いと判断できるでしょう。
文中で話題になっていて正しいことが書かれていても,「全体のタイトルとしてみた場合にピッタリなものはどれか」という視点を持っていないと,こういう問題には正解できません。
第6問の目標点
24/36点
全てを合計して,MARCHに受かる受験生であれば150点以上は取ってください。
2020年度のセンター試験の生徒の出来について
最後のセンター試験の難易度は「例年通りだった」というのが私の感想です。
実際に,塾の生徒たちを集めて聞いてみたところ,
試験直後はできないと感じたけれど,思ったより得点できていた。
問題形式が例年と同じでやりやすかったです。
という返事だったので安心しました。
とはいえ,中堅レベル偏差値の生徒で大きく失点している子もいたのは確かです。
いずれにしても,8割以上取れた人はMARCHのセ試利用で見込みがあるとされました。
試験の3日後ともなると大学入試センターから中間集計が発表になり,ほぼ母集団を推定できるようになりましたが,最終的な結果は以下の通りです↓
- 受験者数は51万8401人
- 平均点は116.31点
2019年度の平均点は123.3点だったので,やや難化しましたが,5%以内の差であればほぼ例年並みと言って構わないでしょう。
参考までに,リスニングの方の平均点は28.78点で,こちらも去年の31.42点よりも低かったです。
まとめ
私がセンター試験を受けたのは20年以上前のことですが,その後は教える側として,最初は弟や妹を相手に,それ以降は塾で受験生に指導してきました。
今回は最後のセンター試験ということで,一問一問噛みしめながら解いてみた私です。
当時,「センター試験は良問が多く,終了になるのは惜しい」という意見がありましたが,新しく始まった共通テストは,リスニングの配点が高くなり,筆記テストの内容は好意的に受け入れられています。
とはいえ,その対策にセンター試験の過去問を解くことはいまだ有効な手段の1つであり,是非,2020年度の問題も解いてみてください。
最後までお読みいただいた方,ありがとうございました。