今回は,多くの方が散々な結果に終わるであろう大学入試の過去問への初挑戦に関して,結果をどのように分析しては,その後の学習に役立てていくかについてまとめていきたいと思います。
ここでは,最も重要な科目である英語を取り上げ,具体的に過去問を使って解説していきましょう!
MARCH英語過去問の読解問題の分析方法
ここではMARCHの英語過去問から,読解問題を分析する方法について紹介していきたいと思います。
使用するのは立教大学の2015年度の過去問です。
大きく分けると,単語分析と国語力が備わっているかの2つをチェックしてください。
わからなかった単語を分析する
以下は,実際に受験勉強を始めたばかりの高3生の答案です↓
四角で囲った部分が,彼の知らなかった語句となります。
大体800語くらいからなる英文ですが,そのうちの5%は40語ほどの意味がわからなかったようです。
このように,英文1行あたりに知らない単語が大体1つ出てくる状態の場合,明らかに英文のレベルが実力より高いと判断することができます。
1人で勉強するときの参考にしていただきたいのですが,もしもやろうとしている問題集に登場する英文がこのような状態だった際は,もう少し易しいものに変えるようにしてください。
とはいえ,夏前に過去問を解いて実力差をチェックする場合はこれで構いません。
いずれはこのレベルの問題を解かなければならないわけですから,どのように勉強していけば攻略できるのかを本気で考えるようにしてください。
例えば,自分が普段学校で使っている単語帳に出ている語句を全て暗記したら,上の問題の語句はいくつわかるようになるでしょうか。
多くがカバーできているのであれば,ますますやる気を出して取り組むことができますし,半分以上の語句が掲載されていないのであれば新しく単語帳を買う必要があるかもしれません。
ちなみに,本番で合格点を勝ち取れる受験生の目には,上の問題は以下のように映っています↓
種類ごとに色分けしてみましたが,付けた色ごとに以下のような性質を持った語句です↓
赤:大体の単語帳に載っている語句で,ほとんどの合格者はその意味を知っています。
青:早慶を併願する受験生であれば,難しめの単語帳(鉄壁とか単語王とか)で出会っているはずの単語です。
緑:推測して,ある程度意味を想像できる単語ですが,これが実践できるかどうかは才能も関わってきます。
紫:こういった語句を難しいと思える受験生は上級者です。
赤の単語ができるだけでも,先の受験生が知らなかった語句の約半分が問題なくなり,40個あった未知の単語は20語ほどになります。
次に青ですが,これはMARCHの合格者の多くが早慶落ちの受験生で占められている根拠と呼べるかもしれません。

赤の単語の意味がすでにわかる方は,青い単語が出てくるような難しい単語帳をやってみるようにしてください。
ただし,赤の単語ができない人は欲張らず,難しめの単語が多い単語帳には手を出さないことをおすすめします。
というのも,赤をできるようにするのにかかる時間と,青をできるようにするのにかかる時間とでは圧倒的に後者の方が長くなるからです。
加えて,赤が試験に出る確率と青が出題される確率では圧倒的に前者の方が高いことになります。
ゆえに,まずは赤のような基礎単語から勉強し,苦手部分をなくすところから始めましょう!
さて,問題は緑です。
こういった単語の意味がきちんとイメージできるかどうかが,MARCHに合格する者が備えている能力・資質と言っても過言ではありません。
とはいえ,そのような想像力は,しっかりと物事を考えられるようになれば自然と身につくものです。
そのためには,わからない英単語があるたびにすぐ辞書を引いたりヒントを見たりする態度を改め,文脈から推測してから確認目的で調べる癖を身に付けるようにします。
例えば,文の中央あたりに出てくる「pretzels」という単語をほとんどの受験生は知らないでしょう。
どの単語帳にもきっと載っていません。
ですが,この単語は
I didn't have to beg my mother to cook me something or settle for(pretzels)or chips
という文章の中に登場してきているわけで,日本語に訳せば「ママに何か作ってとお願いしたり,pretzelsやチップスで我慢したりする必要はなかった」となることから,pretzelsは「chipsに似たスナック的な何か」とイメージできさえすればよいことになります。
文法的に見れば,この文では等位接続詞のorがpretzelsとchipsを結んでいるわけですから,2つは同じような「食べ物」と考えられますし,文構造的には「1つ目のorがbegとsettleを繋いでいて,さらにnot A or B(AでもBでもない)の構文になっている」ことを見抜けることの方が重要です。
さらに言うと,赤で示したsettleという動詞も,単語帳に普通載っている「解決する;定住する;落ち着く」といった意味通りには使われていません。
「settle for ~」の形で使うと「とりあえず~で手を打つ」の意味になります。
もっとも,ここまでわかるMARCH受験生はいないので,意味がわからなかったことを気にする必要はありませんが,「何か違う意味があるのではないか」と考えられることが重要です。
ちなみに,実際のプレッツェルはこんなドイツ生まれのお菓子でした↓
以上の理由から,緑の単語はなんとなくイメージできれば良しとしましょう。
するとここまでで,もう知らない単語は800語中10語程度(約1%)になっています。
そして,復習する際に紫の部分にまで気を配れると,さらに英語の実力は伸びるでしょう。
文章問題を解いているとき,こういうところが「難しいな」と感じられる子にはかなりの素質があります(英語ができるようになると,こういう部分が気になるものです)。
質問文を誤訳していないか確認する
さて,先ほどの受験生の場合,問題を解く以前に大きな問題がありました。
それがこちらです↓
語彙力が不足していることの弊害で最も深刻なのは質問の意味を誤解してしまうことです。
「英語が話せるようになるためには,まず正しく聴けるようにならなければならない」という格言と同じ理由になりますが,そもそも何を質問されているのかわからなければ答えようがありません。
質問文にまで赤が満載の状態では質問が意味するところがわからず,何を答えていいかも当然ながらわからないため,非常に苦しい状態にあると言えます。
ここで,自分の使っている単語帳でこれらの語句の意味を調べてみてください。
選択肢に含まれている単語も含め,そのほとんどが単語帳に載っているでしょう。
MARCHレベルともなると,英語の試験問題はこのように上手く計算されて作られています。
件の受験生も初回にやったときは5割しか正解できませんでしたが,丸付けをさせる前に辞書で意味などを調べさせ,直せるところは直させてから採点してみると正解数は9割になりました。
ちなみに,私も彼と同様,10番を間違えて「ニ」の選択肢を選んでしまったわけですが,こういうタイプの問題を私はとても苦手としていて,二択までは絞れても正解がこれだと決められないことが多いです。
そのため,共通テストの英語でも満点はほとんど取れないのですが,こういう東大卒もいるわけで,このくらいで良しとする方が精神的にやさしく,基本的に楽観的な自分はそれで構わないと思っています。
また,最初に問題を解かせた際,感想を答案に残すように指示したのですが(緑色で示した部分),「文章は読みやすかった」などの素朴な気づきや疑問は,多くの情報を伝えてくれるという点で重要です。
みなさんも,これから問題を解くときは思ったことを書き留めてみてください。

MARCH英語過去問の文法問題の分析方法
続けてMARCHの英語過去問から文法問題を分析していきましょう!
文法問題は頻出問題を正解できたか確認する
最近の私立では文法問題がますます難しくなってきています。
ですが,読解問題の方が配点が高く,文法問題の配点はそれほどではないため,共通テストのリスニングではないですが,文法対策が後回しになっているのが現状です。
とはいえ,捨て問にするわけにはいかず,最低限は正解できないといけません。

その最低限が求めるレベルとは「頻出問題を解けること」に他ならないのですが,そのような状態に至るためには,普段勉強するときの心がけが大切です。
いくつか挙げてみると,以下のようなものがあります↓
- 問題集で間違えたものは,類問を含めて2回目には必ずできるようにする
- 文法問題を解くとき,どうしてその答えになるのかという根拠まで考える
- 前置詞や副詞といった品詞を強く意識する
これら心がけを早い段階から実践して習慣化してください。
そして,もう一つ忘れてはいけないことがあります。
これは問題を解いているときの話になりますが,文法問題は読解問題と違って,時間をかければかけるほど正答率が高くなるものではありません。
塾でみていると,大学の入試問題が時間内に解き終われない人の多くは文法問題に時間をかけすぎていることが多々あります。

そうならないために,
みんなができるであろう問題(自分がどこかで解いたことのある問題)は必ず正解するが,知らないものはできないとすっぱり諦める
ことを心がけましょう。
例えば,最近では学校で契約して使わされることも多いスタディサプリの講義では,文法を「ただ暗記しろ!」などと言いません↓
担当講師は文法を論理的に考えるためのきっかけを提供してくれるでしょう。
学校でやっている文法問題集に加えて,スタディサプリで習ったものだけは完璧にしておく。
それでMARCH英語に十分立ち向かえるようになるため,安心して取り組みましょう!
文法問題を分析して見えてくる合格最低点とは
それでは実際の過去問を分析し,「市販の参考書+スタディサプリ」でどの程度正解できるものなのか検証してみることにします。
実際,難しい問題が多いことは確かですが,丸を付けた問題はこれらの知識でなんとか正解できるはずです↓
これに加えて,文法の勉強で身に付けた知識から,明らかにおかしい選択肢を削っていくことができ,残った選択肢については勘で解いたとしても,上記問題の場合,8問中5問の正答率には到達できるでしょう。
文法の問題集に普段何を使っているかにもよりますが,私の手元にある「ネクストステージ」や「スクランブル英文法」に載っている知識に赤線を引いてみると,結構な量になります。
これに,スタディサプリで学んだ知識を加えれば,さらに選択肢を絞っていくことが可能です。
例えば,1番の問題ですと,スクランブル英文法の735番に「He survived his wife by three years.」という英文が載っています。
このbyが「差を表すby」であることに加え,6番で「20代,40代」といった「年代を表す前置詞のin」をスタディサプリの講義で聞いたことを覚えていれば正解できるかもしれません。
ただし,6番や7番の問題ともなると,「from A to B」や「regard A as B」といった大学側が仕掛けた罠が用意されていて,簡単には解けないでしょう。
なお,3番についてはネクストステージにすべての選択肢の用法が載っていましたし,5番はやや厳しいですが,「blame A for B(AをBのせいで非難する)」という表現はどこかで見たことがあるでしょうし,もちろん「suspect A of B(AにBの嫌疑をかける)」まで知っていたら正解できます。
8番のような問題に関しては,スタディサプリの文法講座の「態」の範囲の説明でしっかり解き方を教わったことでしょう。
people(人)が主語で,正確にはreportの第5文型が受け身になっている形ですね。
いずれにせよ,injureは「~(人)をケガさせる」という意味ですから,人が主語である場合,答えは過去分詞形の「二」しかないと考えることができます。
ちょっと授業めいたものになってしまいましたが,選択肢を一つでも少なくできるよう,少ない数であっても確実な知識を忘れないことが文法問題の攻略には大切です。
そのためには,やった問題を何度も復習し忘れないようにするとともに,新しく出てきた問題はとにかく深くまで理解することを心がけてください。
さいごに
以上,MARCHの英語過去問を分析する際の参考にしていただけたら幸いです。
最後の文法問題のところで言い忘れましたが,文法問題というのは,英作文や正誤問題,さらには記述問題もあるわけです。
文法編で解説したような一問一答形式に比べてどんどん難しくなりますから,読解問題で最大まで得点できる見込み点を計算し,その残りを文法問題で埋めるという戦略でもって,自分なりの合格パターンを導き出していただければと思います。
今回紹介した分析は,塾講師の私が授業で行っているものを紹介しているので,人によっては難しくて到底できそうにないと感じるかもしれません。
ですが,完璧な分析ではなくても,仮に4択の選択問題が2択にまで絞れるようになれば,正答率は25%から50%にまでアップします。
なので,自分なりの分析を通して,一つでも確実な学びを得られれば良しとしましょう。
ところで,市販されている問題集で先の問題の模範解説を読んでみると,例えば文法の4番であれば「threaten A with Bは『AをBで脅す』の意」としか書いてないわけで,これを基に直訳すれば「野生の動物を絶滅で脅す」となって,いまいち理解できないわけです。
同様に,読解問題の9番ではmundaneが登場し,これはほとんどの受験生が知らないはずの単語であるにもかかわらず,解説には「 mundane=日常的な」としか書いていないでしょう。
どちらもまるで,意味を受験生が知っていて当然のような書き方です。
しかし本来,前者であれば「Some species of animals are threatened with extinction(ある種の動物は絶滅の危機に瀕している)」という例文で覚えるべき内容ですし,後者は誰もが推測で解く問題だと思います。
なので,受験生の方は,英語ができる大人が書いた解説に惑わされないようにしてください。
それは英語に限らず,他教科の過去問を分析する際にも当てはまります。
以下の記事も是非参考にしてください↓
最後までお読みいただき,ありがとうございました。