さて今回は,MARCHの数学の過去問を分析していきます。
TVゲームの話が上で出てきましたが,数学をRPGに例えると,「1問にかかる時間」がHP,「諦めない気力」がMP,「計算力」がすばやさや命中を表すことになるでしょう。
私としては「なるべく低いレベルで全クリする」のが好きなのですが,MARCHを受験するのであれば,「出てきた解法はすべて完璧に覚えておく」くらいの意気込みでいた方が楽だと思います。
今回は過去問をみていく前に,まずは数学の問題を解くのに必要なものについて考えてみることから始めましょう!
MARCHの過去問を解く気力はMP
数学が苦手な人は,いつも不安でいっぱいです。
「どうせ,やってもできないや」と思ってしまっていませんか。
心のどこかで,みっともなくでも食らいつくことを諦めてしまっています。
「この問題をなんとしても解いてやる!」という気持ちの強さを,ここでは「MP」と呼ぶことにしましょう。
中学のとき,「サイコロを2つ投げて○○になる組み合わせの数を答えよ」という問題があったのを覚えていますか。
例えばそういう問題が出されたときに,かっこいい解き方がパッと浮かばなくても,サイコロの目のすべての組み合わせを36パターン書き出して,1つ1つ数え上げてもよかったはずです。
しかし高校の数学になってからは,たとえ地道に全部書いてみれば解ける問題であっても,「(簡単に解ける方法が見つからないし,めんどくさいから)わかりません,できません。」と,答えてしまう生徒が多くなる気がします。
しかも今はネットをみたり,もちろん塾の先生に聞けばすぐに答えが分かってしまう時代です。
地道なやり方に時間をかけたくありません。
ですが,こういう,「いざというときの手段」は普段から練習しておかない限り,本番で最終手段に訴える重大な場面においても,うまく手や頭が働いてくれないのです。
防災訓練で消火器の使い方を習うのもそういった理由があるからなのですが,たとえ数学で大量の時間を費やし,考えられる全パターンを書き出し,実は計算ミスしていたり,そのあとどこかでつまづいた結果。答えが間違っていたとしても構いません。
すぐに諦めたり,時間を惜しんではすぐに解答をみていた場合に比べて,確実にMPは増えたはずですから。
公式や解法はMARCHを倒すための魔法
MARCH数学を攻略するために次に大切になってくるのは,魔法による攻撃コマンドの数です。
簡単な魔法は「公式」と呼ばれ,複雑になってくると「解法」などと呼ばれたりします。
公式は,教科書に出ているものだけでも十分ですが,さらに確実に受験に備えるために,「受験勉強中に出会ったすべての公式と解法は,完璧に暗記する」という意識で臨みましょう。
例えば「積和の公式」は加法定理から導けますが,覚えていればいちいち時間をロスしません。
「丸暗記は忘れやすい」と批判するのであれば,忘れやすかった公式だけを書き留めておいて,それを入試の1週間前から暗記して試験に挑めばいいだけではないでしょうか。
解法パターンは多ければ多いに越したことはありません。
とはいえ,MPがなければ魔法もたくさん唱えられませんから,最初の章で語った「MP」の方が,やはりMARCH合格には圧倒的に大切であることを忘れないでください。
例えば,「青チャート」と呼ばれる参考書に出てくる数多の「解法(公式ではない)」を,全部暗記してしまえば全く受験は問題ないです。
が,たいていの人は,解法暗記の途中で挫折してしまうでしょう。
魔法を覚えようとばかりせず,「なんとしても解くんだ!」という気力は高いレベルで持ち続けてくださいね。
特にこれからは思考力を問う問題の登場で,予測不能な問題が次から次に襲い掛かってくるでしょう。
そんなときは,たくさんの公式や解法を当てはめて手を動かしてみるしかありません。
そのためにはやはりMP,つまりは気力が必要です。
MARCHの数学を解くための能力とは
MARCHの数学を攻略するために必要な能力,それはずばり「計算力」です。
計算力とは,「計算ミスをしないという正確性」だけでなく「計算スピードが速い」という2つを意味します。
後者については「式を工夫してできるだけ楽に計算できる能力」も含まれますが,純粋に「文字を書くのが速いこと」の方が重要です。
数学が得意な友達を観察してみてください。
やたらと鉛筆を動かすのが速いことに気づきます。
そういった「手首のスナップ」といいますか,計算を「ガリガリやっていける腕の振り」のようなものは,ある意味,生まれつき備わった,数学強者に共通する資質だと言えるのかもしれませんが,だからといって「数学は普通にできればいいだけだから,自分にはそんなのなくても関係ない」と諦めてはいけません。
少しでも速く計算する。少しでも速く文字を書く。
そういった努力を意識的に積み重ねていくことが,受験に勝つための土台として大切なことだと思うわけです。
時間をかけて解いた問題を計算ミスしてしまわないよう注意するのはもちろん,手を素早く動かしながらも,頭では次に何をするのかを先読みしている。
そういう姿勢が身に付けば,他の科目の問題であっても速く解けるようになるでしょう。
しかし,こういった練習を自分1人でするのは難しいです。
そのためには,時間に余裕がない模試であったり,過去問を制限時間を決めて解くことが必要となります。
はじめての過去問チャレンジでは,「あえて制限時間を設けないことで,計算スピードよりも,最初に紹介したMPが自分にあるのかどうかを探る」ことを第一の目的としていたのですが,今後はそういった計算力も徐々に身に付けていってほしいということで,最後に紹介させていただきました。
ダメ押しで,もう1つ。
例えばここに2人の受験生がいて,同じ問題を解いているとします。
そして先生が後から入って来て答えを言うと,2人とも正解できていました。
何も問題はないと,先生は満足げに授業を終えます。
しかし実際,片方はその問題を2分で解いたものの,もう1人の生徒は10分かかっていたとしたらどうでしょうか。
後者の生徒は計算力の点で問題を抱えていることになります。
これは模試の結果が返ってきたときに,「正解か不正解か」という基準でしか結果を捉えられないと決して見えてくることのない盲点です。
速く解けないから負けている。
そんな分析の視点も,これから是非身に付けてほしいと思います。
MARCH数学の解き方と分析
では実際にMARCHの数学の過去問をみていきましょう!
まずは1番です。
(1)は全部書き出してしまえるのがMPが高い人の自然な行動です。最初は6x3で始まり,最後は6z3 で終わる全部で27個の項を書き出す必要があります。最後xyzの係数を足すときに,計算ミスをしないとか,速く手を動かして書けるのが計算力でしたね。
(2)は「i2= -1」であることを知っていたり,「i の付いたものと付いていないものを分けてみよう」というのが魔法による攻撃コマンドにあたります。もちろん「通分してみる」というのも立派なコマンドの一つです。
(3)では「絶対値を場合分けして外してみる」,(5)なら 「log2x=tと置いて考えてみる」,(7)だと「傾きが同じになるはず」,(8)では「とりあえず判別式」か「点と直線の距離の公式」のどちらを使うでも構いません。このようなコマンドが自分になければ,今後そういった解法を身に付ける必要があります。
これまで言ってきたことに矛盾するようですが,MPがどんなにあっても,魔法コマンドがまったくなければ戦えないこともあるわけで,解法や公式も最低限はないと戦えないのは事実です。
逆にMPが重要となる問題は,例えば(4)のような問題です。
このとき「正の数同士の比較は何乗してもその大小関係は変わらない」というルールを知らなくても,最初のルート2が1.41くらい(ひとよひとよにひとみごろ)であることは手を速く動かせば導き出せるわけです。
その数を面倒ですが3回かけてみると2.8くらいになります。
つまり,3回かけて3になるという意味の「3の3乗根」は1.41よりも大きい数だということがわかるわけです。
同様に1.41を5回かけると5.57ですから,5の5乗根は逆に1.41より小さい値だとわかります。
これはやや上手く行き過ぎた例かもしれませんが,もしこの問題を勘で解くなら,正答率は1/6です。
ですがもし一つでも大小関係の空欄に入る位置がわかれば,確率はどうなりますか?
なんと1/2まで跳ね上がります。
もちろん2つずつ10乗とかできればいいんですが,「解法を知らなくたって解ける」というところが意外とMARCH攻略に必要な気づきとなるわけで,もし,こういう問題を諦めてしまう人がいたら反省して,これから頑張って考えるようにしてください。
さて,次の2番や3番では,MPの大切さをますます実感することでしょう。
2番では,aとbが1以上5以下の自然数と書かれています。
ということは組み合わせとしては全部で25通りです。
もちろん(1)で判別式が使えればもっと楽ですが,25通りそれぞれ数値を代入したグラフを書いてみてください。
もちろん試験本番でこれをするには時間がかかりすぎます。
こういうことは最終手段を使う状況に追い込まれたときにしかやらないことでしょう。
ですが「制限時間なしで,この問題を解け」と言われて,「やり方がわからなかったのでできませんでした」とだけは言ってほしくありません。
(2)も(3)も一つ一つ試していけば正解できます。
(1)よりも簡単にできるので,驚くかもしれません。
そして,時間をかけてできたときの嬉しさや気付きを大切になさってください。
「え,こんな問題を,『できない!』って私は言おうとしてたの」などと思えたら最高です。
最後に3番です↓↓
これも,「やり方がわかりませんでした。」という前に,やれることがないか考えてみてください。
ありますよね。
そうです,a1からa10くらいまで全部書き出してみればよいのです。
そのとき自分のやっている計算をよくみてください。
a1=4,a2=3,a3=5,a4=4。
ここらへんまで計算していて気づきましたか?
a5=7,a6=6,a7=11。
最初a1→a2にするのに1を引いて,a2→a3にする際は,前を2倍して1引いているだけですよね。
それがただただ繰り返されているだけではありませんか。
そうしたらa8からa10までそれぞれどうなるでしょう。
a8=10,a9=19,a10=18となりますね。
このあとそれを使って,b1~b5,c1~c5が何になるか書き並べてください。
bn=4,5,6,11,19…
cn=3,4,6,10,18…
階差数列になっていますよね。
「cn が bn より1少ない」ことに気が付いたら数学のセンスありですよ!
後は階差数列の公式を知ってさえいれば解けそうですよね。
以上の問題は,立教大学の「経済・観光・コミュニティー福祉学部」の2015年度の過去問です。
答えが気になる人は,解答の方,以下の方法でダウンロードしてみてくださいね↓↓
MARCH数学の過去問から分析できること
以上,いかがだったでしょうか。MARCHの数学の過去問を解くときだけでなく,問題集を解くときにも,最初に挙げた3つのことに気を付けていると,思わぬ成績の伸びにつながるかもしれません。
公式や解法をたくさん知っておくに越したことはないのですが,「諦める前にまず何か出来ることがないか探し,あればそれを愚直にやってみる」。
そういう努力ができる人が,受験では成功しているように思えてなりません。
地歴や理科などの過去問分析もやりたいのですが,次回からはしばらく,スタディサプリを使った勉強法を紹介したいと思っているので,良ければ続けて,宜しくお願いします!
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